写真画像 KLMオランダ航空(KLM RoyalDutchAirlines)KL KLM ボーイング747-400(Boeing747-400) PH-BFB
■写真の説明 = 西暦2000年、南南東側から長さ4000mのRunway34(当時成田の滑走路は1本だけでした。)へ着陸進入中のKLMオランダ航空ボーイング747-400ジャンボジェット機を、航空博物館の駐車場から、午前中撮影。 絞りを開放近くに設定したせいで、画面の四隅が暗くなってしまいました。機体の全長は、70.66m。装備しているエンジンは、ゼネラルエレクトリック General Electric GE CF6-80C2B1F 又は 80C2B5F のようです。エンジンのバイパスエアが噴出する位置より後ろの塗装がされていない部分に格子状の小さな開口部が黒く見えます。ボーイング747-400用でこのエンジンと形状が似ている、プラットアンドホイットニー製の PW4056、PW4060、PW4062 等は、同様の開口部が、コクピットに座る操縦士から見て左側に在るようです。
◆追記(プロペラと風車について) = 写真の飛行機はKLMオランダ航空機。オランダと言えば風車。風車からはプロペラが連想されます。ここではプロペラと風車に関して私がどのように認識しているかを述べさせて頂こうと思います。

↑着陸進入中のプロペラ機 (ANA フォッカーF50。2007年に仙台空港で夕方撮影。YS-11と比べやや小さなオランダ製の近代的なターボプロップ機です。)
◇プロペラブレードの断面 = 駐機場に在るプロペラ機を正面から見た図をご想像下さい。このプロペラは正面から見て、反時計回りに回転するとします。次は貴方が右側に歩いて行って、操縦席にいる操縦士から見て左側に移動し、プロペラの回転面の真横に来たと想像してください。プロペラブレードの一枚が真っ直ぐこちらに向いています。このブレードは根元の部分で取り付け角が操縦室から変更できるとします。この方向から見た、プロペラ先端から10センチメートル程内側のブレードの断面を考えます。形状は飛行機の主翼の断面と同様です。上方に進む流線型で前縁が少し飛行機の進行方向に向いています。プロペラが回転し始めたとします。ブレードは上方向に移動し始めますが、断面図は動かずに周辺の空気が動くと考えてください。ブレードは上方向からの気流を受けます。この気流に直角に近い角度で機体を前進させる力がブレードに生じます。
◇機体の速さとプロペラの効率 = 飛行機が左方向に離陸滑走を開始したとします。先程までブレードが受けていたほぼ真上からの気流は、速さを増しながら少し前方からブレードに当たるように傾き始め、それに合わせ操縦士がブレードの迎え角を最適に調整するとします。飛行機が停止していたときにはほぼ真っ直ぐに前方を向いていたブレードの発生させる力が、気流の傾きに伴いやや下に傾きます。この下に傾いた力は、機体の進行方向とそれとは直角の下向きの二つの成分に分けて考えることができます。進行方向の力は機体を前進させる力ですが、下向きの力はプロペラの回転を妨げ、エンジンの負担を増やす力です。飛行機は離陸し車輪とフラップを格納して速さを増して行ったとします。ブレードに当たる気流は速さを増しながら、より前から吹くように傾きを増して行きます。ブレードの迎え角はそれに合わせ操縦士が最適になるよう調整するとします。ブレードの発生させる力も、より下に傾きます。機体を前進させる力と比べたプロペラの回転を妨げようとする力の大きさは、機体の速さが増す程大きくなります。
◇プロペラブレードの迎え角の調節 -1- = 受ける気流に対するブレードの迎え角が大き過ぎるとブレードは失速し、飛行機を前進させる力は減少します。また小さ過ぎると飛行機を前進させる力は得られませんし、それを通り越してブレードの翼弦線がプロペラの回転面に平行に近付くと、ブレードには飛行機の速さを減少させようとする力とプロペラの回転数を増やそうとする力が生じます。これを風車ブレーキ状態というそうです。 ( 飛行中のジャイロコプターやオートローテーション中のヘリコプターのローターは、下面からの気流に対しこれと同様の状態となり、各ブレードが滑空しているのでしょう。) 飛行中にプロペラが正常に働き続けるためには、受ける気流に対するブレードの迎え角が、適切に調整され続ける必要が有ります。迎え角が自動的に細かに調整されると便利だと思われますが、最新のプロペラ機ではそうなっているのでしょうか。
◇プロペラブレードの迎え角の調節 -2- = 往復運動より回転運動の方が効率が良いはずなのですが、魚やイルカは停止した状態から非常に短い時間で最高速に加速する能力を持ちます。これは進化の結果獲得した運動神経の鋭さと細やかさ、体のしなやかさ、そして洗練された体の形状によって、その時々の泳ぐ速さに応じて、受ける水流に対するヒレの迎え角が、常に最適に保たれることによるものでしょう。鴨川シーワールドでイルカのショーを見ていて気付いたのですが、イルカの尾ビレの先端に後方に突き出た丸い形をした部分があります。これが安定板の役目を果たし、尾ビレの迎え角を最適に保っているのかもしれません。飛行機のプロペラブレードの先端を同じ形状にして、フェザリング時や逆推力にする操作を行うとき以外は、これによってブレードの迎え角を自動的に調整するのを助けるような方式にすれば、突風にも瞬時に対応し得るかもしれません。
◇ブレードの円周方向の速さとプロペラの効率 = もう一度先程の断面図を思い起こしてください。プロペラブレードは回転していて上へ進み、飛行機はある速さで左へ前進しています。ブレードは上方と前方(左)の間の斜め方向から気流を受け、これによってブレードが機体を前進させる力を生むようにブレードの迎え角は操縦士によって常に最適に調節され続けるとします。ブレードの断面の位置を少しプロペラの根元側に近付けてみます。円周方向(上へ)の速さは遅くなり、ブレードの受ける斜めの気流は前方寄りから吹き、その流れにほぼ直角方向に生じるブレードに働く力の向きはより下向きになり、機体を前進させる力と比べたプロペラの回転を妨げようとする力の大きさが大きくなります。ブレードの付け根付近ですと、ほとんど回転数を落とそうとする力ばかりになります。逆にブレードの円周方向の速さが最も速い先端付近は、速さが臨界マッハ数未満であれば最も効率が良く、また受ける気流の速さが最も速い為にブレードが発生させる力も大きくなります。機体を前に押す力の多くを発生させるこの部分は非常に重要であると言えます。第二次世界大戦時のアメリカの傑作戦闘機 P-51 ムスタング のプロペラは、設計の際にこの点が特に留意されたのではないでしょうか。
◇プロペラの回転数と効率 = ブレードの円周方向の速さが速い程効率が良いのですが、速過ぎて遷音速に達しますとブレードが衝撃波失速し、効率が悪化します。ブレードの付け根から先端の間で、円周方向の速さが最も速いブレード先端に当たる斜めの気流の速さが、ブレードの衝撃波失速する速さ ( ブレード先端に後退角を付けることによってその速さである臨界マッハ数は高まるようです。遷音速翼形の採用も有効でしょうか。 ) の一歩手前になるように、プロペラの回転数が調節され続けられるのが望ましいと思われます。機体の空気に対する速さが速くなると、この回転数は遅くなることになります。回転数も自動的に細かに調節されると便利だと思いますが、最新のプロペラ機ではそうなっているかもしれません。
◇二重反転プロペラ = 二重反転プロペラにすると効率が良くなるそうですが、それは前方のプロペラの回転によって後方のプロペラが受ける気流の向きが変わり、後方のプロペラの効率が良くなるからだと思います。これまでの話のプロペラをAとします。Aの少し前に、反対方向に回転するプロペラBを設置したとします。機体の前方から真っ直ぐに流れてきた気流は前方のプロペラBの回転によって回転させられ向きが変わります。後方のプロペラAの断面図で、ブレードには前方と上方の間の斜め方向から気流が当たっていましたが。この気流の向きが、より上方向から当たることになります。気流とほぼ直角方向にブレードに生じる力はより前方を向き、機体を前進させる力と比べたプロペラの回転を妨げようとする力は小さくなりこのため効率が良くなると思われます。
◇ターボファンエンジン = 写真の機体のエンジンは GE CF6-80C2B1F でしたら、バイパス比5.05 ( ファンによって後ろに排出される空気の重量を燃焼に使用される空気の重量で割った値が5.05 ) の高バイパス比 ( 4以上だと高バイパス比 ) ターボファンエンジンです。エンジン最前列に位置するファンの大部分は、吸い込んだ空気のの83%以上を後方に噴出させるプロペラとして働いていて、機体を前に押す役割の多くを担っているようです。
 プロペラ機のプロペラブレードは付け根部分で取り付け角が調整できるものが多いのですが、ターボファンエンジンのファンブレードは取り付け角が固定されています。ファンブレードは常時正常に働いているのでしょうか。機体が停止している状態で失速せずにファンブレードが働いているとすれば、それはダクト入り口からファンまでを移動することによって空気が充分な速さでファンに当たるからでしょう。巡航中はどうでしょうか。マッハ0.85で巡航中は主翼が衝撃波失速しているでしょうから、機体の航行する速さよりも速い気流を受けるはずのファンブレードはもちろん衝撃波失速していそうですが、入り口よりも内部側が広がったベルヌーイの定理を応用してあると思われるダクト (ダイバージェント・ダクト) が在ることによってダクト内の空気の流れの速さが遅くなり、ファンブレードでの衝撃波の発生が抑制されているようです。お見事です。
 飛行中に機体が受ける気流の向きは一定ではありません。プロペラ機ではプロペラの回転面に斜めに気流が当たると、性能が十分に発揮できない他に振動や騒音が増すと思われます。ターボファンエンジンではダクトが空気の流れをファンの回転面に直角の方向に整えますので前述のような問題は発生し難いでしょう。
 ターボファンエンジンのダクトはエンジンの構造の単純化とそれに伴う軽量化、効率の向上、騒音と振動の低減等に貢献する非常に重要なもののようです。
◇風車の能力 = 海の近く等で風車式の風力発電機が設置されているのを目にすることが有ります。近くで見ると風車のブレードは驚くような速さで空を切っています。オランダの伝統的な風車はもっとゆっくり回るのではないでしょうか。風車の回転数が増えるとブレードに当たる気流が速くなり、その気流にほぼ直角方向に生じる力も大きくなり、風車を回転させようとする力の成分も増加しますが、それに比べてブレードを風下に押す力の増加のし方が急であると思われます。風車の回転速度が速ければ速い程効率が良くなるのかと言うとそうでもなく、風車をよけて通る風が増えてしまい、ある回転速度を超えると効率が落ちるそうです。

↑風力発電機:2007年 福島県 郡山市 湖南町 布引 郡山布引高原風力発電所『風の高原』にて撮影。ここには33基もの風力発電機が設置されています。写真の風車はドイツENERCON社製E-70。出力は2000キロワット級。ローター直径は71m(ボーイング747-400の全長より大)。この日は約5秒で1回転していました。右側の写真ではガラス繊維とエポキシ樹脂の複合材製のブレードが風下側に撓っているのが判ります。ローターブレードの風上側に曲がった先端は、効率向上と騒音の低減及びブレードにかかる力の軽減を目的としたもののようです。この機種はタワーの風上側でローターが回転しますが、後に他の場所でタワーの風下側で回転する機種も見ました。
■撮影に使用した機材 = カメラ:Canon EOS 5 , レンズ:Canon EF200mm F1.8L USM + PL-C52? , フィルム:FUJIFILM FUJICHROME Velvia , 一脚:Manfrotto クランプ2箇所のアルミ製一脚(フォッカーF50と風力発電機の撮影には、FUJIFILM FinePix F420 コンパクトデジタルカメラを使用。)